銀座画廊物語
社長から本をいただいた。
大きな紙袋に何冊も。しかも、数回にわたって。本の整理をしていたら、間違えて同じものを2度買ってしまった本があったそうだ。私がインターネットで、一度に数十冊も注文するときもあれば、社長が本屋さんでお買いになる本もある。合わせればかなりの冊数なので、一度買ったものを忘れてしまうこともあるだろう。そのお陰で、だぶって購入された本を私が頂くことになった。
自分では、知らない、又は興味がないように思っていた本との出会い。わくわくしながら最初に読んだのは、「銀座画廊物語 日本一の画商人生」(吉井長三著)。
お昼休みに読み始めたら、すぐに惹きこまれて休み時間があっと言う間に過ぎてしまった。それから毎日、お昼休みはその本を読むのが楽しみになった。
私は初めて、世界で活躍する日本を代表する画商、吉井長三さんのことを知った。世界に誇る活躍をしてきた日本人のことを、私はほとんど知らないことに気づく。読み進めるうちに、吉井氏に大きな影響を与えたという画家、ルオーの絵を、どうしても見たくなった。
吉井氏との縁で、一括保存の危機状況にあったルオーの「受難」をまとめて買い取った出光氏。そんなエピソードを読み、早速、出光美術館へ出かけた。
昔、友人に付き合って、美術館めぐりをしたことがある。友人はアートを専攻していたせいもあって、画家の名前も良く知っていたし、絵や彫刻を見ては、感心したり、コメントしたり。私は、何を見ても、どこがいいのか全くわからず、自分にはアートを鑑賞する才能はないのだろうと思っていた。それ以来、みずから進んでは美術館へ行くことはなかった私を、一冊の本が美術館に誘い出してくれたのだ。
美術館にはルオーの作品が3点、常設コーナーに展示されていた。その前に立ってみる。最初に目に飛び込んできたのは黒く太い線。力強い。生きているみたいな絵だ。
ルオーの作品の前に立ち、何かを感じている私がいた。ドクドク。それは、鼓動のような音だった。3枚の絵のひとつひとつの前に立ち、近づいたり離れたりを繰り返す。何回やってみても、そのたびに新鮮で、絵と向き合う楽しみの入り口をやっと見つけたような気がした。最後に、いちばん気に入った絵の前に立つ。もっと、たくさんの絵を見たいという想いが静かにわいてきた。
面白い本は終わりに近づいてくると、読み終えてしまうのがもったいなくて、わざとゆっくり丁寧に読む。この本も、そんな一冊だった。吉井氏が山梨に創った芸術村へも、いつか足を伸ばしてみたい。
Rie
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