« 2008年12月 | トップページ | 2009年2月 »

2009年1月

フレンチ?イタリアン?

「こちらがイタリアン、奥がフレンチ。最初は、イタリアンをお楽しみください。」

まるで、料理の話みたいだと思いながら、演奏会のプログラムを見る。

教会的な雰囲気の漂う100席ほどの小さな円形ホール。アーチ型の天窓からあわい光が射しこむ。

今日はチェンバリストの知人のリサイタル。私は、チェンバロを弾く様子をよく見たかったので一番前の席に座る。目の前には、2台のチェンバロ。イタリアンとフレンチ。イタリアンの方は、あっさりしたデザインで素材の色を活かし、脚もすっきり、モダンな感じがする。フレンチは装飾のラインが入っていて、脚は網を編んだようなデザイン。こうして並べてみると、イタリアンとフレンチの違いがわかりやすい。

チェンバロの演奏は、ラジオなどで何度か聞いたことがあった。音の響きがやさしくて好きな楽器のひとつ。それを生演奏で聞くのは初めてだった。

色とりどりの花が咲いているお花畑のようなドレスに身をつつみ、彼女がチェンバロを弾き始める。

やはり、音の響きがやさしい。形はピアノに似ているし、もともとチェンバロから派生してピアノが出来たけれど、その音質はとても違う。チェンバロの音のやさしさに、うっとりしながら、この違いは何だろうと思い巡らす。ふと、チェンバロは、ギターやハープのように弦を弾いているのではないかと思い至る。リサイタルの後、チェンバロを見せていただいたら、確かに爪のようなもので弾く構造になっていた。

チェンバロは、生で聴いていただくのが一番いいのです、とチェンバリストの知人は言う。

小さなホールで、チェンバロの音につつまれていたら、中世の貴族たちがサロンで音楽を楽しんでいるイメージが浮かんだ。優雅なシャンデリア、クラッシックなソファ、絨毯、ドレスの長い裾。そんな室内で楽しむのにぴったりの楽器だと思う。

イタリアンのチェンバロを聞くパーティーなら、イタリアンスタイルのテーブルセッティングがいいだろうか。楽器のスタイルに食卓のセッティングを合わせたりしたのだろうか。食卓芸術やお料理の世界だけで知っていたイタリアンとフレンチが、チェンバロの世界に広がって、いろいろなイメージが湧いてくる。今まで知らなかったことを知ることで、今まで知っていた世界も広がるときは、とてもわくわくする。アフタヌーン・ティーのBGMがチェンバロの生演奏なら、どんなにすてきだろう。

週末、我が家のマンションのリビングで、久しぶりに丁寧にミルクティーを入れ、新しく買ったフランス人チェンバリストのCDをかけてみた。窓の外に見えるのは、空とお隣のビルだけれど、音楽と一緒に気持ちは中世へと旅をした。

Rie

| | コメント (0)

優雅なサイン会

「りえさん、私、この雑誌2冊あるので、一冊どうぞ。」と社長からいただいたのは、女性洋服ブランドFoxeyのファッション誌。

上質の紙を使った表紙を開くと、オーナー前田義子さんの言葉にはじまり、新作の紹介から旅のエッセイなど、おしゃれでカラフルな写が続く。新作の洋服を着たモデルさんの写真もたくさん載っているけれど、前田さんの写真は、本当にかっこよくてオーラとパワーがあふれている。

前田さんの本「前田義子の強運に生きるワザ」と出会ったのは、数年前、図書館で。たまたま捜していた本の側にあったので、借りて読んでみたら、やる気と元気と勇気が湧いてきて、私のバイブル的存在になった。

図書館から2回ほど借りて、最後には本屋さんで購入した。この本、なかなかいいよと友人に貸したら、心動かされるものがあったらしく、自分でその本を買っていた。その後、他の友人が、無人島に一冊だけ本を持っていけるとしたらこの本にしたい、と言う話も聞く。

前田さんファンは、けっこういるらしく、今月その赤い本は文庫化された。やはり、いい本は、何年も読まれ続けてゆくのだなと思う。

前田さんの本を読んだら、彼女が作り出しているものにも興味がわいてきて、銀座に出かけたときにフォクシーの本店に立ち寄ってみた。旅行用の化粧ポーチとさくら色のマニュキアを買い、顧客カードを記入した。

しばらくして、そんなことをすっかり忘れていた頃、前田さんの新刊発売記念サイン会のお知らせが届いた。本物の前田さんを直接見てみたいと、ミーハー気分で出かけて行く。

当日は小雨の中、長い列に並ぶことになるのだろうと想像しながらお店に到着するが、人の列ははい。店内に入ると、すぐに受付があって、名前を告げると番号札をくれた。そして、親切にもカサを預かってくれて、「番号をお呼びするまで、お待ちくださいませ。」と地下へ案内される。

え、これがサイン会?

テーブルの上には、氷の入ったトレイに、ヴィーヴクリコのシャンパンとペリエがあふれるほど置かれている。どちらも飲みきりサイズの小さなボトル。ワインも用意され、その横には、銀製のトレイにマカロンなどのカラフルな小菓子が並び、フォクシー・ブランドのチョコレートまで用意されている。まるで、高級ホテルのアフタヌーン・ティーに来たような優雅な空間。

店員さんが一人一人のところまで来て、何をお持ちしましょうか?と聞いてくれる。本を買って列に並び、ササッとサインをしてもらって終わり、というサイン会を想像していた私には、衝撃的。ペリエとお菓子をいただいて、優雅な気分にひたる。

だんだんにお客さまがやってきて、少し混んできたので、1階へ上がり洋服を見ていると、私から数メートル離れていた正面玄関がパッと開く。

ふと目をやったそこに、太陽のように現れたのは、前田さんだった。目が合ってしまった。
私の周りに人はいなくて、前田さんは、まっすぐに私の方へ歩いてきて私の目の前に立つと、満面の笑顔で、「こんにちは。ようこそ、いらっしゃいませ。」と言う。あんまり突然だったので、「こんにちは」としか返せなかった。そして彼女は奥のオフィスへと消えていった。

突然の熱い風に吹かれたように、私は立ちつくしたまま心が躍っているのを感じていた。

さて、いよいよサイン会。お客様は列に並ぶこともなく、手荷物を全て預かってもらい、一人ずつ案内されて、サインのテーブルへ。

私が案内されると前田さんは、サッと立ちあがり、「今日は、いらしてくださってありがとうございます。」と言ってから席につきサインを書き始めた。

その前田さんに、「今日は、初めてお目にかかれてうれしいです、ご著書には大変励まされ・・・、」と話し始めたら、彼女はサインを書く手をパッと止め、しっかりと顔を上げて私の目をじっと見た。書きながら人の話を聞いたりはしないのだ。そして私に答えてから、またサインの続きを書いてくれた。

この一瞬の彼女の行動は、私に強い印象を残した。謙虚さ、人としての大きさ、この瞬間に賭ける意気込み、明るさ、真剣さ、生きる姿勢のすべて。

サインを書き終えると、立ち上がり、満面の笑顔とともに、両手で記念品を渡してくれた。
サインをもらったあとは、待ち構えていた店員さんが、すばやく私の荷物を用意してくれて、本を袋に入れてくれた。そして、深々とお辞儀をする。最初から最後まで、至れり尽くせりだ。お店に着いたときより、ずっと幸せな気持ちになっている。

今度は、きっと、ここへ洋服を買いに来よう、そう思わずにはいられなかった。

Rie

| | コメント (0)

福の年

幸運にも、新年早々、歌舞伎座のチケットをいただき、お正月開けの最初の週末に歌舞伎座へ出かけた。

新年にしか見れないというおめでたい演目「祝初春式三番叟(いわうはるしきさんばそう)」があるということで楽しみに出かける。

そのチラシの「さよなら歌舞伎座」という文字を目にして、今の歌舞伎座は、今年いっぱいで取り壊されてビルに建て替えられることを初めて知った。東京銀座の真ん中にあって、異彩を放つこの建物がなくなってしまのは、寂しく勿体ないと思う。

この建物そのものが、私には歌舞伎の象徴でもあった。基礎の部分は大正時代に、その後、昭和25年に増築されて、現在のものが完成。奈良及び桃山時代の優雅な趣をもつ建物は「登録有形文化財」に登録されているそうだ。

それが、取り壊されて劇場とオフィス棟を併せ持つ複合ビルになる。時代の波には、逆らえなかったのだろうか。それとも敢えて、果敢に未来に挑むのだろうか。逆らえない流れに、覚悟を決めて舵を切ったのだろうか。

いずれにしても、この大きな決断が、世界に誇る日本文化のひとつである歌舞伎にとって、必ずや良い結果をもたらすことを信じよう。手放すことで、初めて手にできるものがある。今までものを手放す痛みと新しいものと出会う喜びは、セットになっている。どちらか片方だけ、というのは無いように思う。

今、この時代も荒波の中で大きく舵を切りながら、波しぶきを立てて揺れているのかもしれない。

歌舞伎座のさよなら公演の門をくぐると大きな鏡餅が飾ってあった。私が両腕を回しても届かないほどの大きさ。その下に敷かれた昆布は太く長く垂れていた。その前で写真を撮る人が後を絶たない。私も携帯でパチリ。この写真を撮っただけで、いい運を得たような気持ちになる。

程なく幕を開けた「祝初春式三番叟」の舞台は明るい。国土安泰を祈る舞、五穀豊穣を祈念する賑やかな踊り。この舞台を見れたことだけでも、今年のスタートは縁起がいい。

気持ちの持ち方は大切だと思う。楽しく気持ちになることや気分が明るくなるようなことにどんどん触れて、心の力を信じながら、2009年、福の年(2は「ふ」、9は「く」と読んで)を、元気よく過ごしてゆこう。

きっと、大丈夫。

良き年は始まりました。

Rie

| | コメント (0)

« 2008年12月 | トップページ | 2009年2月 »