時の流れに
家から歩いて5分。一橋大学のキャンパスは、奥が深い。
街の真ん中を陣取るキャンパルは、大きな公園のようで、雑木林も池もあり、ちょっと贅沢な散歩ができる。今の季節は紅葉した銀杏の葉が、風に吹かれてハラハラと舞っている。
キャンパスにある大正から昭和初期に建てられた古い講堂は、入口や窓のデザインがアーチ型になっていたり、車寄せがあったり、味わいのある建物が多い。この建物を見て回るだけでも、けっこうな散歩になる。
10年程前までは、今より、もっとたくさんの林や空き地があったけれど、新しい校舎や寮が建ち、私の好きだった雑木林はなくなってしまった。
新しい建物は、古い建物の色やデザイン似せて建てられた。けれど、似て非なるもの。新しい建物は、古い建物の隣に、その味わいのなさをさらすことになってしまった。予算の関係や、資材の調達、それに職人さんの技のようなもの、いろいろな面で、昔と同じものを作ることは、出来ないのだろう。
最近修繕工事の終わった兼松講堂は音楽ホールにもなっている。
先日、中に入る機会があった。音楽会の始まるまでの間、辺りを見渡す。柱の上の彫刻は、同じものがひとつとなく、窓やステージはアーチ型にデザインされている。直線が少ないアナログ的な空間だ。ただ機械的に四角に区切られた空間と違って、私は好きだなと思いながら、飽きずにながめていた。
兼松講堂は、100年後も使えるようにと考えて修繕がおこなわれたそうだ。
100年後、私はいないけれど、この建物は、どんな時代を向かえ、どんな人たちを迎え入れるのだろう。100年後の人の心にも、この建物は、きっとやさしく触れるのではないだろうか。その頃には、今、新しくて無機質に感じられる建物も、味わい深いものになるのかもしれない。
移り行くもの、消えてゆくもの。時の流れに思いを馳せながら。
ステキな週末を。
Rie

