やわらかさ
休日前の夜、久しぶりにゆっくりとバスタイムを過ごす。
いつもより少し念入りにバスルームを掃除して、グラスにコントレックスを注ぎ、本を用意する。今日は、どの本にしようかしらと選ぶときからバスタイムは始まる。
お風呂に入りながら本を読む人はけっこういるようだ。以前、丸善で入浴時に読む本コーナーを見つけたことがあった。近代小説からノウハウものまで、種類は豊富。本の素材がプラスチックになっていて濡れても大丈夫なようになっている。
これはいいなと思って手に取ったけれど、ふと、その感触が手になじまず、買うのを止めた。薄いプラスチックではあるけれど、やはり硬い。その「硬さ」の上に書かれた文字も、やはり硬くて目に強すぎる。お風呂で読むには便利かもしれないけれど、リラックスできないような気がした。それに、お風呂以外の場所で読書することも多いのだし。あらためて、やわらかな紙のやさしさに気づいた。お気に入りの本がバスルームで少々よれよれになっても、それも、またいいか。
その日は、本棚から「シンプル&ラグジュアリー」という本を選ぶ。バスタブにつかりながら、洒落たベッドルームやバスローブ、香りを楽しめるソープなどの写真をじっくりと見る。そして、真っ白でふかふかのバスタオルの写真。そのやわらかな感触につつまれたら、どんなに気持がいいだろうかと想像をめぐらしているうちに、あっという間に時間は過ぎていた。
あとはもう、眠るだけ。ベッドに入る前に、最近気に入っているスパ・ミュージックのCDをかける。音楽と一緒に女性の声が入っている。フランス語なので意味はわからないけれど、響きがやわらかいので耳に心地いい。この声を聞くと、どこか異国のホテルの一室にいるような気分になる。最後に、バラの庭という名の香りのピロー・ミストを枕にシュッ、シュッ。やわらかな香りに包まれて、おやすみなさい。
ぐっすりと朝まで熟睡するだろう思っていたら、夜中に、ふと目が覚めた。時計を見ると午前3時52分。
なんとなくベランダに出たら、空に星がいっぱい。そして、星のお花畑の真ん中に弓形のお月さまがキラキラ。はっとするほどきれいだった。「あぁ、私って、宇宙にいたんだ。」と突然、そう思う。
地球にいるということは、宇宙にいるということでもある。考えてみれば当たり前のことだけれど、普段は、そんなことは思ってもみない。私は宇宙にいる、そう気づいて、日常のことを思い出してみたら、やわらかな気持ちになる。
星々の間にひろがる暗闇は、そろそろとやわらかくなり、近づいてくる夜明けを待っているようだった。
Rie

