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おいしい空気

「空気がおいしい。」と言いながら、何度も深呼吸をする。

こんなにおいしい空気を呼吸できるなんて、それだけで癒される。いつも空気のおいしいところに暮らしている人は、きっと当たり前すぎて意識もしないのだろう。

1年に一度ぐらい、無性に軽井沢に行きたくなるときがある。軽井沢の土地のもつエネルギーに包まれたくなるのだ。今回も急に決めて、母と出かけた。軽井沢に着くと、最初に空気のおいしさに気づく。ちょっと疲れ気味で元気のなかった母の足取りは、驚くほど軽くなり、食欲も増す。私たちに、軽井沢のエネルギーが合うんだねなどと話す。

軽井沢の駅から、いつものお気に入りのお蕎麦屋へ直行する。背の高い元気な男性の店員さんに案内されて、このお蕎麦屋さんの光がたくさん入る店内に腰をおろすと、ようやく軽井沢にやってきた実感がわいてくる。
とても感じの良い店員さんで、母が話しかける。

「東京から軽井沢に来ると、いつもホッとするわ。」

「そうですよね、僕も東京にいるとシワが増えます。」と言って笑う。ゆっくりと時間が流れていく。注文の品を早く決めなくては、と急かされることもなく、話したり、笑ったり、ひとつひとつの時間を味わう。店員さんの間の取り方も自然で、私たちは、とても居心地よく食事をした。

あんまりリラックスしすぎたせいか、レジでお会計をするときに、前に待っていた人に気づかすに自分の伝票をレジに出してしまった。母が気づいて、私に「こちらの方が先にいらしたのよ。」と後ろから言う。あわてて謝ったけれど、私に「横入り」された30歳前後のカップルは、「どうぞ、どうぞ」とニコニコしている。店員さんも笑っている。

ちょっと恐縮しながらお会計を済ませ、カップルにお辞儀をすると二人とも大きな笑顔を返してくれた。瞳があんなに輝いていたから、きっとあのカップルは、とっても幸せに違いない。

お店を出ると、曇り空の間から光がさしてきた。おいしい空気は、みんなを包んで優しい気持ちにさせるのかもしれない。

おいしい空気をいっぱい呼吸した週末。東京に戻って母は、

「楽しかった、楽しかった。また行きたい、また行きたい。」と毎日言っている。

Rie

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